

上司に「辞めます」と
なかなか言い出せない。
どうしよう……
転職活動よりも、内定をもうことよりも、実は一番重いのがこれです。
「辞めます」と言い出せない。
お世話になった上司の顔が浮かぶ。
人手不足の職場が、さらに回らなくなる気がする。
引き止められたら、断れる自信がない——。
告白します。
私はリハビリ部長として、退職を切り出される側であり、正直に言えば、引き止める側でもありました。
どの言葉を使えば退職を迷わせられるのか。
どのタイミングで昇給や役職の話を出すのか。
その手の内を、経験として知っています。
だからこそ、この記事が書けます。
- 引き止めでよく使われる言葉
- 角を立てずに退職する手順
- 有給・賞与・退職金で損をしない考え方
- 実際に使える退職の伝え方
「言い出せない」を「言えた」に変えるための設計図を、順番にお渡しします。

- 理学療法士として臨床経験15年以上
- 元リハ部長、現経営管理部長
- 多くの採用・昇進の評価をする側を経験
- 整形クリニック複数の経営に関与
- 自身も昇進・キャリアアップで年収アップを実現
- 論文を年間200本以上チェックし、正確な情報を発信
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先に安心を。退職はあなたの権利です
手順の前に、大切な土台を一つ確認しておきます。
退職は、労働者に認められた権利です。
期間の定めがない雇用契約の場合、法律上は退職の意思を伝えてから2週間で雇用契約を終了できるとされています。
就業規則に、
「退職は3か月前までに申し出ること」
と書かれていたとしても、それだけを理由に退職そのものを止めることはできません。
- 人手不足だから辞められない
- 後任が決まるまで辞めさせない
- 担当患者がいるから認められない
このように言われると、気持ちの上では縛られてしまいます。
しかし、施設側が一方的にあなたの退職を禁止できるわけではありません。
ただし、権利があるからといって、
「明日からもう来ません」
という辞め方が最善とは限りません。
リハ職の世界は広いようで狭く、担当患者さんへの責任もあります。
目指すのは、退職する権利を理解したうえで、できるだけ円満に抜けることです。
ここからは、その具体的な手順を説明します。
退職は「いつ・誰に・どう伝えるか」が重要

いつ伝える?|退職希望日の2〜3か月前が目安
法律上の期間と、円満退職に必要な期間は別です。
実務上は、退職希望日の2〜3か月前に伝えるのが一つの目安です。
リハ職の場合、退職までに次の対応が必要になります。
- 担当患者さんの引き継ぎ
- シフトの組み直し
- 後任者への情報共有
- 書類や記録の整理
- 有給休暇の調整
これらを考えると、2週間では職場側も本人も慌ただしくなります。
まずは就業規則を確認し、規定されている期限よりも少し早めに動くと、角が立ちにくくなります。
賞与を受け取ってから伝えたい場合の考え方は、後半で説明します。
誰に伝える?|最初は直属の上司一人だけ
退職を伝える順番は、とても重要です。
最初に伝えるのは、直属の上司です。
リハビリ部門であれば、主任・科長・部長などが該当します。
ここでやってはいけないのが、同僚や仲の良いスタッフに先に話すことです。
狭い職場では、秘密にしているつもりでも、思った以上に早く噂が広がります。
上司が本人ではなく、人づてに退職の話を知ると、
「なぜ先に相談してくれなかったのか」
という感情が生まれます。
引き止める側だった立場から言うと、本人より先に噂で知ることは、特にこじれやすいパターンでした。
退職を正式に伝えるまでは、信頼できる同僚であっても話さないほうが安全です。
どう伝える?|「相談」ではなく「報告」にする
ここが最大のポイントです。
退職を決めているなら、相談ではなく、決定事項の報告として伝えます。
避けたい伝え方
「退職を考えていまして、ご相談があるのですが……」
おすすめの伝え方
「ご報告があります。〇月末で退職させていただきたく、本日お伝えに参りました」
「相談」と言った瞬間、上司には、
「まだ決めていない」
と受け取られる可能性があります。
そして、引き止める側は、その迷いに入ってきます。
私自身も、相談という形で話を持ちかけられたときは、条件変更や配置転換などを提案していました。
すでに退職を決めているなら、
- 退職の意思
- 退職希望日
- 引き継ぎに協力する姿勢
この3点をセットで伝えましょう。
最初の一文を暗記しておくだけでも、切り出すときの負担はかなり減ります。
引き止める側が使う4つの説得パターン

ここからは、少し内情をお話しします。
退職の引き止めには、よく使われる定番のパターンがあります。
あらかじめ知っておけば、実際に言われても冷静に対応できます。
①「後任が見つかるまで待ってくれないか」
この言葉の狙いは、退職期限を曖昧にすることです。
「後任が見つかるまで」には、明確な期限がありません。
応じてしまうと、退職日が1か月、2か月と延びる可能性があります。
返答例
「お気持ちは分かりますが、次の入職日が決まっておりますので、〇月末で退職させてください。引き継ぎは最後まで責任を持って行います」
ポイントは、次の2つです。
- 退職日は動かさない
- 引き継ぎには協力する
期限を守りながら誠意を見せることで、対立を避けやすくなります。
②「昇給する」「役職をつける」
これは、いわゆるカウンターオファーです。
給与や役職を提示し、退職を思いとどまらせようとします。
ここで一度、冷静に考えてみてください。
なぜ、辞めると伝えるまで、その条件は出てこなかったのでしょうか。
経営側の立場から見ると、引き止め時の昇給は、
「今抜けられると困る」
という事情から提示されることがあります。
必ずしも、あなたに対する評価が突然変わったとは限りません。
また、一度退職を申し出たあとに残ると、職場での立場や人間関係が以前と同じままとは限りません。
返答例
「ありがたいお話ですが、条件ではなく、次の職場でやりたいことを考えて決めました」
給与や役職の交渉に入らず、転職の目的に話を戻すことが大切です。
③「みんなに迷惑がかかる」「患者さんはどうするんだ」
この言葉が狙っているのは、罪悪感です。
そして、リハ職に最も効きやすい言葉でもあります。
担当患者さんや同僚の顔を思い浮かべると、
「自分が辞めるのは無責任なのではないか」
と思ってしまいます。
しかし、人員の補充や業務の再配分は、本来、組織や経営側が対応する仕事です。
退職者一人が、今後のシフトや人員不足まで背負う必要はありません。
返答例
「ご迷惑をおかけする可能性があるからこそ、早めにお伝えしました。引き継ぎ資料は退職日までに必ず仕上げます」
罪悪感の議論に入るのではなく、引き継ぎという行動で誠意を示しましょう。
④「もう少し頑張れば変わる」「今辞めるのはもったいない」
この言葉の狙いは、決断を先延ばしにさせることです。
もちろん、本当にあなたの将来を心配して言っている上司もいます。
ただし、
- 何が変わるのか
- 誰が変えるのか
- いつまでに変わるのか
これらが明確でなければ、状況が変わる約束とは言えません。
返答例
「そこまで考えていただき、ありがとうございます。ただ、十分に考えたうえで出した結論です」
感謝は伝える。
しかし、結論については議論しない。
これが最もこじれにくい対応です。
引き止めには「感謝・結論・引き継ぎ」で返す
引き止めへの対応で、覚えておきたい原則は一つです。
退職するかどうかの交渉をしないこと。
交渉に入った時点で、退職は、
「条件によっては取り消すかもしれない話」
として扱われます。
何を言われても、次の3点を繰り返してください。
- 話を聞いてくれたことへの感謝
- 退職の結論は変わらないこと
- 引き継ぎには責任を持つこと
基本の返答テンプレート
「お話しいただきありがとうございます。ただ、十分に考えて決めたことなので、退職の意思は変わりません。退職日までは引き継ぎに責任を持って対応します」
この一文を準備しておけば、突然の引き止めにも対応しやすくなります。
退職理由は「不満」ではなく「次にやりたいこと」で伝える
退職を伝えると、多くの場合、
「どうして辞めるの?」
と聞かれます。
ここで、現在の職場への不満を並べるのはおすすめしません。
例えば、
- 残業が多い
- 給料が低い
- 人間関係がつらい
- 上司と合わない
- 評価に納得できない
このような理由を伝えると、
「残業を減らす」
「給料を上げる」
「部署を変更する」
といった引き止めの材料を渡すことになります。
また、退職までの在籍期間も気まずくなりやすくなります。
避けたい伝え方
「残業が多くて、これ以上続けられません」
おすすめの伝え方
「訪問リハビリの分野に挑戦したいと考え、退職を決めました」
本音に不満が含まれていたとしても、表向きの理由は、次の職場で実現したいことに絞ります。
これは嘘をつくということではありません。
円満退職のために、伝える情報を整理するということです。
退職理由の例
- 訪問リハビリに挑戦したい
- 急性期の経験を積みたい
- 管理職としての経験を広げたい
- 地域医療に関わりたい
- 家庭との両立を優先したい
- 新しい環境で専門性を高めたい
送り出す側も納得しやすい理由を選びましょう。
損をしない退職設計|賞与・有給・退職金

退職を伝えるタイミングによっては、受け取れるはずのお金を受け取れなくなる可能性があります。
切り出す前に、次の3点を確認しておきましょう。
賞与|支給条件を就業規則で確認する
賞与は、多くの施設で、
「賞与の支給日に在籍していること」
が条件になっています。
ただし、施設によって規定は異なります。
退職を伝える前に、就業規則や賞与規定を確認してください。
賞与を受け取ったあとに退職を伝えること自体は、通常の退職手続きの一つです。
実際に、賞与支給日の直後に退職を切り出す人も少なくありません。
有給休暇|最終出勤日と退職日を分ける
残っている有給休暇は、原則として取得を申請できます。
よくある設計は、次の流れです。
引き継ぎ完了
↓
最終出勤日
↓
有給休暇の消化
↓
正式な退職日
例えば、3月31日付で退職し、残っている有給休暇を3月後半に使う場合、実際の最終出勤日は3月中旬になることがあります。
有給をすべて消化したい場合は、退職を伝える段階で残日数を確認し、早めに相談しましょう。
退職金|勤続年数の境目に注意する
退職金には、
「勤続3年以上」
「勤続5年以上」
などの支給条件が設けられていることがあります。
勤続年数の境目にいる場合、退職日を数か月調整するだけで、退職金の支給対象になる可能性があります。
必ず、就業規則の退職金規程を確認してください。
損を避けやすい標準的なスケジュール
賞与・有給・退職金を考えると、多くの人にとって検討しやすいのは、次の流れです。
賞与支給日の直後に退職を伝える
↓
2〜3か月かけて引き継ぐ
↓
残っている有給休暇を消化する
↓
退職する
ただし、賞与や退職金の条件は施設ごとに異なります。
必ず、自分の職場の就業規則を確認したうえで決めてください。
退職の進め方は転職エージェントにも相談できる
転職エージェントは、求人を紹介して内定を取るためだけの存在ではありません。
多くの場合、次のような相談にも対応しています。
- 退職を切り出すタイミング
- 上司への伝え方
- 引き止めへの対応
- 入職日の調整
- 内定先への説明
- 退職時期が延びた場合の相談
特に、
「引き止めに遭って、予定していた入職日に間に合わない」
という状況は、転職エージェントにとっても無関係ではありません。
内定先との入職日調整を、代わりに行ってくれる場合もあります。
すでにエージェントを利用している人は、内定が出た段階で、
「退職の進め方についても相談したいです」
と伝えてみてください。
自分では言いにくい入職日の変更も、エージェント経由なら調整しやすくなることがあります。
悪質な引き止めに遭った場合
ほとんどの職場では、話し合いによって退職手続きを進められます。
しかし、中には次のような対応をされるケースもあります。
- 退職届を受け取ってもらえない
- 退職日を一方的に延ばされる
- 損害賠償をすると脅される
- 大声で責められる
- 退職を理由に嫌がらせを受ける
- 有給休暇の申請を一切認めてもらえない
このような場合は、一人で抱え込む必要はありません。
労働局の総合労働相談コーナー、労働基準監督署、弁護士など、外部の相談窓口を利用する選択肢があります。
状況によっては、退職代行を検討する方法もあります。
ほとんどの人には必要ありません。
しかし、逃げ道があると知っていること自体が、退職を切り出す勇気につながります。
退職を伝えるときの会話例

最後に、そのまま使える会話例を紹介します。
最初の切り出し方
「少しお時間をいただけますでしょうか。ご報告があります。〇月末で退職させていただきたく、本日お伝えに参りました」
退職理由を聞かれたとき
「以前から興味のあった訪問リハビリの分野に挑戦したいと考え、決断しました」
引き止められたとき
「お話しいただき、ありがとうございます。ただ、十分に考えたうえで決めたことなので、退職の意思は変わりません」
人手不足を指摘されたとき
「ご迷惑をおかけする可能性があるからこそ、早めにお伝えしました。退職日まで、引き継ぎには責任を持って対応します」
昇給や役職を提案されたとき
「ありがたいお話ですが、条件ではなく、次の環境で挑戦したいことを考えて決めました」
まとめ|感謝・結論・引き継ぎの3点セットで伝える
この記事のポイントを整理します。
- 退職は労働者に認められた権利
- 円満退職を目指すなら2〜3か月前が目安
- 最初に伝えるのは直属の上司一人
- 「相談」ではなく「報告」として伝える
- 引き止められても退職の交渉はしない
- 退職理由は不満ではなく、次にやりたいことで伝える
- 賞与・有給・退職金の規定を事前に確認する
- 入職日の調整は転職エージェントにも相談できる
- 悪質な引き止めは外部機関に相談する

引き止める側にいた人間として、最後に本音をお伝えします。
上司として一番困るのは、職員に辞められることではありません。
突然辞められること。
そして、話がこじれたまま辞められることです。
早めに伝え、順番を守り、引き継ぎまで責任を持って行う。
そのような退職者を、悪く言う上司はほとんどいません。
退職を伝えるときに必要なのは、長い説明ではありません。
感謝する。
結論を変えない。
引き継ぎに協力する。
この3点だけで十分です。
あなたが手順を守るなら、円満退職の主導権は、最初からあなたの側にあります。
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