【2027年度介護報酬改定】訪問リハビリの点数は下がる?訪問看護ステーションと診療所の将来を予測

2027年度介護報酬改定による訪問リハビリの点数・減算の見直しと、訪問看護ステーション・診療所の今後を解説するアイキャッチ画像 career
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2026年10月24日時点の公表情報に基づく解説

2026年10月19日、厚生労働省は第271回社会保障審議会・介護給付費分科会で、2027年度(令和9年度)の介護報酬改定に向けた訪問看護・訪問リハビリテーションの対応案を示しました。

今回、特に注目したいのが次の2点です。

  • 訪問看護ステーションのリハビリ専門職による訪問について、報酬評価を見直す方向性が示されたこと
  • 診療所・病院などの訪問リハビリテーションでは、事業所医師による診療を基本とする案が示されたこと

これらは訪問リハビリに従事する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士だけでなく、訪問看護ステーションや医療機関の経営にも影響する可能性があります。

では、今後の訪問リハビリはどうなるのでしょうか。

リハビリスタッフ
リハビリスタッフ

介護報酬の点数は下がるの?

リハビリスタッフ
リハビリスタッフ

訪問リハビリの需要は増えるの?

リハビリスタッフ
リハビリスタッフ

診療所と訪問看護ステーションでは、どちらが経営上有利になるの?

今回は、このような疑問に厚生労働省の公表資料をもとに、現行制度・2027年度に向けた対応案・今後の予測を分けて解説します。

※本記事でいう「リハ職」は、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)を指します。「ST」は訪問看護ステーションの略称としても使われるため、施設については「訪問看護ステーション」と表記を統一します。

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  1. 1. 結論:訪問リハビリの需要は中長期的に増加する可能性。ただし、報酬は事業所の機能によって差が広がる可能性
    1. ① 訪問看護ステーションのリハ職による訪問
    2. ② 診療所・病院などの訪問リハビリテーション
    3. ③ 訪問リハビリ全体の需要
  2. 2. まず知っておきたい2種類の訪問リハビリ
    1. ① 訪問看護ステーションからのリハビリ
    2. ② 診療所・病院などからの訪問リハビリテーション
  3. 3. 訪問リハビリの利用実績は実際に増加している
    1. 訪問看護ステーションと訪問リハ事業所の比較
    2. 訪問看護の中でリハ職の割合が高くなっている
  4. 4. 2040年に向けて訪問リハビリの需要はどう変わる?
    1. 85歳以上の訪問診療需要は62%増加する見込み
    2. 今後、重要性が高まると考えられる分野
  5. 5. 現行の介護報酬と2026年6月の改定内容
    1. 訪問看護ステーションと診療所の基本報酬
    2. 2026年6月には処遇改善加算も新設
  6. 6. 訪問看護ステーションのリハビリは今後どうなる?
    1. 2024年度改定ですでに減算が導入されている
    2. 2027年度はサービス提供体制や実績を踏まえた評価へ
    3. リハ職が多い事業所は本当に高収益なのか?
    4. 仮に報酬が5%下がった場合の経営への影響
  7. 7. 診療所・病院の訪問リハビリはどうなる?
    1. 診療未実施減算の見直しが焦点
    2. 診療未実施減算の算定率は低下している
    3. 2027年度改定に向けて示された3つの対応案
    4. リハビリテーションマネジメントでは「生活機能の改善」が重要に
    5. 医師が関与できる診療所は有利になる?
  8. 8. 医療保険との違いと、整形外科クリニックが考える今後の戦略
    1. 医療保険の訪問リハビリはどうなる?
    2. 私が整形外科クリニックで訪問リハビリを考えるときに重視すること
    3. 2027年以降、訪問リハビリはどうなっていくのか?
    4. まとめ:訪問リハビリは「量」だけでなく「提供体制と質」が問われる時代へ
  9. 参考資料・出典
    1. 免責事項

1. 結論:訪問リハビリの需要は中長期的に増加する可能性。ただし、報酬は事業所の機能によって差が広がる可能性

結論からいうと、訪問リハビリの需要は中長期的に増加する可能性がある一方、すべての事業所が同じように報酬上の評価を受けられるとは限らないと考えます。

2018年度から2024年度にかけて、訪問看護ステーションのリハ職による訪問と、診療所・病院などが提供する訪問リハビリテーションの算定回数は、いずれも増加しています。

今後も高齢化や在宅療養の増加を背景に、生活機能の維持・改善を目的とした訪問リハビリの必要性は高まると予想されます。

ただし、実際の需要は地域の人口構造や介護保険制度、サービスの供給体制によって左右されます。

一方、2027年度介護報酬改定では、訪問看護ステーションのサービス提供体制や、訪問リハビリテーション事業所における医師の関与が重視される方向です。

そのため、訪問リハビリの需要が増えても、すべての事業所の収益が増えるとは限りません。

今回の審議会資料から読み取れるポイントは、次の3つです。

① 訪問看護ステーションのリハ職による訪問

サービス提供体制や実績を踏まえた報酬評価の見直しが提案されています。

2024年度改定ではすでに一部の事業所を対象とした減算が導入されており、今後も看護機能との連携や事業所の提供体制が重要になる可能性があります。

② 診療所・病院などの訪問リハビリテーション

事業所医師による診療を基本とする案が示されました。

自院の医師が診療し、リハビリテーション計画の作成・指示・評価に関与できる事業所は、制度変更に比較的対応しやすいと考えられます。

③ 訪問リハビリ全体の需要

高齢化に伴って在宅生活を支えるリハビリの重要性は高まると考えられます。

特に、退院直後の生活機能回復、骨折後の在宅支援、転倒予防、ADL・IADLの改善などは、今後も重要な領域になるでしょう。

ただし、全国一律に需要が増加するとは限らず、地域差には注意が必要です。

なお、2026年10月24日時点では、2027年度の基本報酬や具体的な減算単位数は決定していません。

現段階で「訪問看護ステーションのリハビリは必ず減算される」「診療所の訪問リハビリは増点される」と断定することはできません。


2. まず知っておきたい2種類の訪問リハビリ

訪問リハビリといっても、介護保険では大きく2つの提供形態があります。

① 訪問看護ステーションからのリハビリ

訪問看護の一環として、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者の自宅を訪問します。

制度上は「訪問看護」に位置づけられます。

訪問看護ステーションでは、看護師とリハ職が連携しながら、利用者の療養生活や日常生活を支援します。

② 診療所・病院などからの訪問リハビリテーション

医療機関や介護老人保健施設などが、訪問リハビリテーション事業所としてサービスを提供します。

こちらは「訪問リハビリテーション」に位置づけられ、事業所医師の診療や指示、リハビリテーション計画への関与が重視されています。

今回話題になっている「診療未実施減算」の見直し案は②に関するものです。

訪問看護ステーションのリハ職による訪問には、直接適用されません。

一方、①についても別の報酬見直しが議論されています。

同じ理学療法士が利用者の自宅を訪問する場合でも、制度上の位置づけや報酬体系が異なるため、両者を分けて考えることが重要です。


3. 訪問リハビリの利用実績は実際に増加している

厚生労働省の資料3には、2018年度から2024年度までの算定回数の推移が示されています。

訪問看護ステーションと訪問リハ事業所の比較

出典:厚生労働省「第271回介護給付費分科会 資料3」51ページ

※原本は千件単位で表示されており、本表では万件に換算しています。

両サービスとも算定回数が増加していますが、訪問看護ステーションからのリハ職による訪問の方が、増加倍率は高くなっています。

ただし、これは利用者の実人数ではなく、介護保険の年間算定回数です。

利用者数の増加だけでなく、1人当たりの利用回数の変化なども影響している可能性があります。

訪問看護の中でリハ職の割合が高くなっている

2026年4月審査分では、訪問看護の訪問回数に占めるリハ職による訪問の割合は次のとおりです。

出典:厚生労働省「資料3」50ページ。

訪問回数ベースでは、リハ職による訪問が半数以上を占めています。

しかし、基本報酬の単位数ベースで見ると、状況は異なります。

出典:厚生労働省「資料3」49ページ。2024年度の年間集計。

回数割合と単位数割合では対象期間が異なり、看護職員とリハ職では訪問時間や基本報酬の体系も違います。

そのため、「訪問回数の半分以上がリハ職だから、訪問看護の収入の半分以上がリハビリによるもの」と解釈することはできません。

それでも、訪問看護の中でリハ職が大きな役割を担っていることは確かです。

今後は、訪問看護の本来の役割を踏まえたサービス提供体制が、これまで以上に重要になると考えられます。


4. 2040年に向けて訪問リハビリの需要はどう変わる?

訪問リハビリの将来を考えるうえで、人口構造の変化は重要です。

85歳以上の訪問診療需要は62%増加する見込み

厚生労働省は、2020年から2040年にかけて、訪問診療の需要について次のように推計しています。

出典:厚生労働省「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料2」6ページ

特に85歳以上の高齢者では、医療と介護の両方を必要とするケースが増えると考えられます。

ただし、これは訪問診療の需要に関する推計であり、訪問リハビリの需要が62%増えるという意味ではありません。

訪問リハビリの利用量は、介護保険制度、利用者の状態、地域のサービス供給体制などにも左右されます。

そのうえで、高齢化や在宅療養の増加を背景に、訪問リハビリの需要は中長期的に増加する可能性があると考えます。

今後、重要性が高まると考えられる分野

特に、退院後の生活機能回復と、在宅生活を継続するための支援は重要な領域になると考えます。

一方で、予防的な支援の必要性が高まっても、すべてが介護保険の訪問リハビリとして提供されるとは限りません。

通所リハビリ、自宅での自主運動支援、地域の介護予防事業などとの役割分担も求められます。

また、地域差にも注意が必要です。

高齢者人口が増加する地域と減少する地域では、訪問リハビリの需要も異なる可能性があります。

事業所の経営を考える場合は、全国の人口推計だけでなく、地域の高齢者人口や介護サービスの利用状況を確認することが重要です。


5. 現行の介護報酬と2026年6月の改定内容

今後の報酬を予測する前に、現行の基本報酬を確認します。

訪問看護ステーションと診療所の基本報酬

2026年10月時点の、介護保険における主な基本報酬は次のとおりです。

※40分相当は、20分の基本単位数を2回算定した場合の単純計算です。加算・減算、地域区分、実際の算定要件などは考慮していません。

基本報酬だけを見ると、診療所等の訪問リハビリテーションの方が20分当たり14単位高くなっています。

しかし、事業所ごとに医師や看護師の配置、算定できる加算、必要な管理業務などが異なります。

そのため、基本単位数が高いからといって、必ずしも利益率が高いとは限りません。

2026年6月には処遇改善加算も新設

2026年度の介護報酬臨時改定では、これまで対象外だった訪問看護や訪問リハビリテーションにも、介護職員等処遇改善加算が新設されました。

出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定」

2026年6月施行の改定内容です。

この加算は、所定の要件を満たした事業所が職員の賃金改善を行うためのものです。

したがって、加算が新設されたからといって、そのまま事業所の利益が増えるわけではありません。

経営側としては、基本報酬だけでなく、加算・減算を含めた実質的な収入と、人件費・移動コストなどの支出を合わせて考える必要があります。


6. 訪問看護ステーションのリハビリは今後どうなる?

私は、2027年度改定で特に注意が必要なのは、訪問看護ステーションからのリハ職による訪問だと考えています。

2024年度改定ですでに減算が導入されている

2024年度の介護報酬改定では、次のいずれかに該当する場合、リハ職による訪問1回につき8単位の減算が設けられました。

減算の対象となる条件

  1. 前年度の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えている。
  2. 緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算をいずれも算定していない。

また、介護予防訪問看護では、リハ職による訪問を12か月を超えて行う場合の減算も見直されました。

8単位減算を算定している場合は、12か月超の訪問について、さらに15単位が減算されます。

8単位減算の対象でない場合でも、12か月超では5単位の減算が適用されます。

出典:厚生労働省「資料3」47〜48ページ。

2027年度はサービス提供体制や実績を踏まえた評価へ

2026年10月19日の分科会では、訪問看護ステーションのリハ職による訪問について、サービス提供体制や実績等を踏まえた評価の見直しが提案されました。

重要なのは、訪問看護の役割を踏まえたサービスを適切に評価するという考え方です。

これまでの改定と合わせて考えると、今後は次のような事業所で報酬上の差が生じる可能性があります。

今後の評価に対応しやすいと考えられる事業所

  • 看護師とリハ職が適切に連携している
  • 医療的ケアや状態変化への対応体制が整っている
  • 重度者や退院直後の利用者に対応できる
  • サービス提供実績や算定状況を適切に管理している

経営上の注意が必要と考えられる事業所

  • リハ職による訪問が中心になっている
  • 看護師による訪問が少ない
  • 医療的な対応体制が十分ではない
  • 長期利用者が多く、支援目標や達成状況の整理が不十分である

ただし、これは今後の制度変更を踏まえた予測です。

2026年10月24日時点では、新たな減算率や報酬区分の具体案は示されていません。

リハ職が多い事業所は本当に高収益なのか?

厚生労働省の資料には、訪問看護事業所の収支に関するデータもあります。

出典:厚生労働省「資料3」52ページ。2024年度決算に基づく集計。

この調査では、リハ職による訪問割合が高い事業所ほど収支差率が高い傾向がみられます。

しかし、注意が必要です。

看護職員のみが訪問する事業所と、リハ職割合が50%を超える事業所では、月額介護料収入に5倍以上の差があります。

つまり、リハ職の割合だけでなく、事業所規模による経営効率の違いが収支差率に影響している可能性があります。

さらに、リハ職割合50%超の事業所は有効回答数が24と少なく、この結果だけで全国の事業所の収益構造を断定することはできません。

リハ職が多ければ必ず高収益になる、という意味ではないのです。

仮に報酬が5%下がった場合の経営への影響

では、仮に訪問看護ステーションのリハ職による訪問の基本報酬が5%下がった場合、売上にどの程度影響するのでしょうか。

40分相当の訪問を月80件行うケースで試算します。

試算条件

  • 40分相当:588単位
  • 月間訪問件数:80件
  • 1単位:10円
  • 加算・減算・地域区分による単価差は考慮しない

仮に5%減少した場合、年間では282,240円の売上減少となります。

これは報酬引き下げ時の感度分析であり、2027年度に5%引き下げられると予測しているわけではありません。

実際には、報酬が下がっても人件費や移動時間、車両維持費などの経費は同じ割合で減少しません。

そのため、基本報酬が数%変わるだけでも、事業所の利益に与える影響は大きくなる可能性があります。


7. 診療所・病院の訪問リハビリはどうなる?

一方、診療所や病院などから提供する訪問リハビリテーションでは、事業所医師の関与を重視する方向が明確になっています。

診療未実施減算の見直しが焦点

現在、訪問リハビリテーションでは、事業所医師がリハビリテーション計画作成のための診療を行わなかった場合でも、一定の要件を満たせば50単位を減算してサービスを提供できます。

これが診療未実施減算です。

要介護者の基本報酬で比較すると、次のようになります。

診療未実施減算の算定率は低下している

厚生労働省の資料では、診療未実施減算の算定率が次のように変化しています。

  • 2019年4月審査分:20.8%
  • 2025年4月審査分:11.0%

出典:厚生労働省「資料4」22ページ。

減算を算定しない訪問リハビリテーションの割合が、創設当初と比べて増加しています。

また、診療未実施減算を算定している利用者の27.7%で、リハビリテーションマネジメント加算も併算定されていました。

出典:厚生労働省「資料4」25ページ。2025年11月審査分。

2027年度改定に向けて示された3つの対応案

今回、厚生労働省が示した主な対応案は次のとおりです。

① オンライン診療の活用を明確化

事業所医師が外来や訪問による対面診療を行うことが難しい場合に、オンライン診療を利用できることを明確化する案です。

② 事業所医師による診療を基本とする

適用猶予期間を設けたうえで、事業所医師の診療に基づく訪問リハビリテーションの実施を基本とする案です。

③ 診療未実施減算とリハビリテーションマネジメント加算の併算定を不可とする

適用猶予期間中は、診療未実施減算を算定している場合、リハビリテーションマネジメント加算を併算定できないようにする案です。

出典:厚生労働省「資料4」26ページ

ここで、制度を混同しないように注意が必要です。

現行制度で設けられている事業所外の医師の研修要件に関する適用猶予は、2027年3月31日までです。

一方、今回提案された新たな適用猶予期間の長さは、まだ決まっていません。

また、資料では診療未実施減算の「廃止」が正式に決定されたわけではありません。

リハビリテーションマネジメントでは「生活機能の改善」が重要に

診療所・病院の訪問リハビリテーションについて、もう一つ注目したいのが、リハビリテーションマネジメントの推進です。

厚生労働省は、2027年度介護報酬改定に向けて、次の内容をリハビリテーションマネジメント加算の算定要件として明確化する案を示しました。

  1. 利用者の自宅での活動や社会参加の状況を把握し、活動・参加に関する目標を設定すること
  2. 設定した目標に基づき、ADL・IADL訓練などを含むリハビリテーション計画を作成すること
  3. 目標の達成状況を確認し、必要に応じてリハビリテーション計画を見直すこと

原資料では、これらの目標や達成状況をリハビリテーション会議で共有・報告することが示されています。

ここでいうADL・IADLは次の意味です。

  • ADL(日常生活動作):食事、排泄、更衣、入浴、移動など、日常生活の基本的な動作
  • IADL(手段的日常生活動作):買い物、調理、掃除、金銭管理、交通機関の利用など、より複雑な生活動作

これまでも生活機能の改善は訪問リハビリの重要な目的でしたが、今後は目標設定から実施内容、達成状況の確認まで、より明確に管理することが求められる可能性があります。

例えば、単に「歩行訓練を実施した」という記録だけでなく、次のような生活の変化を確認することが重要です。

  • 自宅のトイレまで安全に移動できるようになった
  • 屋外歩行が可能になり、買い物を再開できた
  • 転倒リスクを減らすための動作や環境調整ができた
  • 家族の介助量が軽減した

また、退院時共同指導加算についても、介護老人保健施設や介護医療院からの退所者に対象を拡大する案が示されています。

出典:厚生労働省「第271回介護給付費分科会 資料4」13・17ページ。

医師が関与できる診療所は有利になる?

私は、医師による診療とリハビリテーション計画の管理を適切に行える診療所・病院は、今後の制度変更に比較的対応しやすいと考えます。

すでに自院の医師が利用者を診療し、リハビリテーション計画の作成・指示に関与している場合、診療未実施減算の見直しによる直接的な影響は限定的になる可能性があります。

反対に、外部の主治医からの情報提供を中心に運営している事業所では、診療体制の見直しが必要になることも考えられます。

ただし、診療所の訪問リハビリ全体の基本報酬が引き上げられると決まったわけではありません。

医師の診療に伴う時間的負担や、計画書作成、会議、記録などの管理業務も考慮する必要があります。


8. 医療保険との違いと、整形外科クリニックが考える今後の戦略

医療保険の訪問リハビリはどうなる?

診療所・病院からの訪問リハビリを考える際には、介護保険だけでなく医療保険の制度も確認する必要があります。

医療保険には「在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」があります。

2026年度診療報酬における主な点数は次のとおりです。

出典:厚生労働省「C006 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料」

※厚生労働省の原本PDFの416枚目に掲載されています。

原則として週6単位までですが、退院した日から数えて3か月以内の患者さんでは週12単位まで算定できるなど、条件によって上限が異なります。

なお、介護保険と医療保険のどちらを利用するかは、要介護認定の有無、対象疾患、医師の指示、制度上の適用条件などによって決まります。

事業所が自由に有利な制度を選べるという意味ではありません。

また、訪問看護ステーションから医療保険で行う理学療法士等の訪問についても、介護保険とは異なる報酬上のルールがあります。

2027年度介護報酬改定の対応案が、そのまま医療保険にも適用されるわけではありません。

私が整形外科クリニックで訪問リハビリを考えるときに重視すること

私は、整形外科クリニックで長年リハビリ部門の運営に携わり、現在は経営企画にも関わっています。

外来・通所・訪問リハビリの連携を考えるうえで重要だと感じるのは、患者さんの身体機能や生活状況の変化に合わせて、必要なリハビリを継続できる体制を整えることです。

例えば、圧迫骨折や人工関節術後、変形性関節症などの患者さんでは、病状が安定していても、自宅からの移動が困難になり、外来通院の継続が難しくなる場合があります。

そのようなとき、診療所の医師とリハビリ専門職が情報を共有し、ケアマネジャーなどと連携できれば、患者さんの状態に応じた在宅での支援につなげやすくなります。

この強みを生かすことが、整形外科クリニックによる訪問リハビリテーションの重要な役割の一つだと考えています。

具体的には、次の4つがポイントです。

① 事業所医師の診療とリハビリ計画の管理体制を整える

まずは、医師の診療、リハビリテーション計画、指示、定期的な評価を適切に実施できる体制を構築することです。

将来、診療未実施減算の取扱いが厳しくなった場合でも、制度変更に対応しやすくなります。

② 外来・通所・訪問リハビリの連携を強化する

整形外科クリニックには、外来で継続的に診療している患者さんが多くいます。

患者さんの身体機能や生活状況を把握できていれば、外来から在宅への移行を円滑に支援できる可能性があります。

ただし、訪問リハビリの利用には、各制度の対象要件を満たす必要があります。

③ 訪問看護ステーションと役割分担する

今後は訪問看護ステーションと診療所が、単に利用者を取り合うのではなく、必要なサービスに応じて連携することが重要になると考えます。

医療的管理や看護ニーズが高い利用者には訪問看護、生活機能の改善を中心とする利用者には訪問リハビリテーションなど、個々の状態に合わせて支援します。

④ リハビリの成果を数値で評価する

訪問リハビリの質を把握するためには、利用者の状態を継続的に評価する仕組みが重要です。

例えば、次のような指標が考えられます。

  • BI(バーセルインデックス:食事、移動、排泄などの日常生活動作を評価する指標)
  • 歩行能力や歩行速度
  • 転倒回数
  • 外出頻度
  • ADL・IADLの変化
  • リハビリテーション目標の達成率

利用開始時と3か月後などを比較すれば、生活機能がどのように変化したかを把握しやすくなります。

ただし、これらの指標がそのまま新たな報酬算定要件になると決まったわけではありません。

利用者の状態把握、ケアマネジャーとの情報共有、リハビリの質の改善に活用することが目的です。

2027年以降、訪問リハビリはどうなっていくのか?

最後に、訪問看護ステーションと診療所・病院の訪問リハビリについて、今後の方向性を比較します。

※この表は、2026年10月24日時点の審議会資料に基づく予測です。2027年度改定の決定内容ではありません。

まとめ:訪問リハビリは「量」だけでなく「提供体制と質」が問われる時代へ

今回の審議会資料を確認して、私は今後の訪問リハビリには次の3つが重要になると考えています。

1つ目は、訪問リハビリの需要は中長期的に増加する可能性があること。

高齢化や在宅療養の増加に伴って、生活機能を維持・改善するリハビリの重要性は高まると予想されます。

ただし、地域差があり、需要が増えてもすべての事業所の売上が増えるとは限りません。

2つ目は、訪問看護ステーションのリハ職による訪問には、報酬見直しの圧力があること。

看護機能との連携や提供体制などを踏まえた評価が、これまで以上に重視される可能性があります。

3つ目は、診療所・病院の訪問リハビリでは、医師の関与がさらに重要になること。

事業所医師による診療を基本とする方向が示されており、診療体制とリハビリテーションマネジメントを適切に整備する必要があります。

整形外科クリニックの経営を考えると、既存の医師・リハビリ専門職・外来患者とのつながりを生かし、診療所の訪問リハビリテーションを段階的に充実させることは、有力な選択肢の一つだと考えます。

ただし、実際の採用や設備投資については、今後の報酬改定だけでなく、地域の需要、訪問件数、移動時間、加算算定率、人件費などを総合的に判断する必要があります。

訪問リハビリは、単純に訪問件数を増やすだけでなく、利用者の生活機能を改善できる体制を持つことが、今後ますます重要になるのではないでしょうか。


参考資料・出典

本記事では、主に次の公的資料を参照しました。

  1. 厚生労働省|第271回介護給付費分科会 資料3「訪問看護」
    47〜52ページ:リハ職による訪問の減算、算定回数、収支差率等。56ページ:評価見直しの対応案。
  2. 厚生労働省|第271回介護給付費分科会 資料4「訪問リハビリテーション」
    13・17ページ:リハマネ加算、退院時共同指導加算の対応案。20・22・25・26ページ:事業所医師の関与と診療未実施減算。
    ※資料3・資料4のページ番号は、いずれも資料内に印字された番号です。
  3. 厚生労働省|第271回介護給付費分科会 開催案内
  4. 厚生労働省|令和8年度介護報酬改定
  5. 厚生労働省|介護職員の処遇改善
  6. 厚生労働省|在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ 資料2
    6ページ:2020年から2040年にかけての訪問診療需要の将来推計。
  7. 厚生労働省|在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料(C006)
    PDFの416枚目:同一建物居住者以外300点、同一建物居住者255点。退院日から起算して3か月以内は週12単位まで算定可能。

免責事項

本記事は、2026年10月24日時点で公表されている厚生労働省の資料および関連情報をもとに作成しています。

2027年度介護報酬改定に関する内容には、審議会で示された対応案や筆者による予測が含まれています。今後の審議によって、制度内容や算定要件、報酬単位数が変更される可能性があります。

実際の算定や事業運営に当たっては、今後公表される告示・通知・Q&A等の最新の公式情報を必ずご確認ください。

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この記事を書いた人
ミカタ

ミカタ(理学療法士)
元リハビリテーション部長。採用する側として多数の面接を経験し、現在は整形外科クリニックの経営管理部長。年間200本以上の医学論文を読む健康オタク。エビデンスに基づくカラダの話と、採用側の視点で語るリハ職のキャリアの話を発信しています。

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