👩🦰「お薬がどんどん増えていくのが不安…」
👨🦱「糖質制限って、ほんとうに2型糖尿病にいいの? 危なくない?」
そんなモヤモヤを感じている方に向けて、今日は
「低炭水化物ダイエットで、糖尿病の寛解(かんかい=症状がおさまること)はどこまで期待できるのか?」
を、しっかりエビデンス(科学的根拠)から解説します📊
今回ご紹介するのは、
23本のランダム化比較試験をまとめた、大規模システマティックレビュー&メタ解析の論文です。Goldenberg J Z 2020
低炭水化物ダイエット(LCD)ってどんな食事?
論文では、低炭水化物ダイエット(LCD:Low Carbohydrate Diet)を次のように定義しています。
- 1日あたり糖質130g未満
または - 総エネルギーの26%未満を糖質からとる食事
さらに、より厳しい
超低炭水化物ダイエット(VLCD:Very Low Carbohydrate Diet=Very Low Carbohydrate Diet) は
- 総エネルギーの10%未満が糖質
- おおよそ 1日50g未満の糖質
という、かなりストイックな内容です💦
対象となった人たちは
- ほとんどが肥満または過体重の2型糖尿病患者
- 23試験・合計1357人
- 平均年齢は40代後半〜60代
- 約6〜12か月間、通常の食事(主に低脂肪食)と比較
というイメージです。
6か月までの結果:寛解「らしき状態」が増えた🩸
まず、研究で使われた「寛解」の基準を整理します。
- HbA1c(過去1〜2か月の平均血糖)6.5%未満
※HbA1cは、糖尿病のコントロール状態を見る指標です
この基準をつかったとき、6か月時点では…
- 通常食グループ:31%がHbA1c 6.5%未満
- 低炭水化物グループ:57%がHbA1c 6.5%未満
➡ 約32%ぶん、低炭水化物グループのほうが多く「寛解らしき状態」になっていたことが報告されています✨Goldenberg J Z 2020
ただし、ここが重要ポイント👇
「薬を使っていてもOK」な定義での寛解です。
「HbA1c 6.5%未満 かつ 糖尿病薬なし」という、
より厳しい条件にすると、差はかなり小さくなり、
統計的にハッキリした差は出ませんでした。
HbA1c・体重・脂質の変化は?📉
① HbA1cの変化
6か月時点で、低炭水化物食は
- HbA1cを平均0.47%ほど多く下げていた
例:
HbA1c 8.0% → 低炭水化物食で約7.5%くらいまで下がるイメージです(あくまで平均)。Goldenberg J Z 2020
1%近く下がると合併症リスクがかなり変わるとされるので、
0.47%は「ほどよく意味のある改善」と考えられています。
② 体重の変化
6か月時点では、
- 通常食より平均3〜4kgほど多く減量
- バイアスの少ない質の高い試験に絞ると
→ 約7kg多く減っていた試験もありました🏃♀️
一方で、12か月まで追うと、
- 体重の差はほとんど消えてしまい、
他の食事療法とあまり変わらない、という結果です。
「最初の半年はよく減るけど、その後キープが難しい」
という、ダイエットあるあるなパターンですね😅
③ 中性脂肪・インスリン抵抗性
血液検査では、
- 中性脂肪
- インスリン抵抗性(HOMA-IRという指標)
が、6か月・12か月ともに
臨床的に意味のあるレベルで改善していました。Goldenberg J Z 2020
一方で気をつけたいポイント⚠️
① LDLコレステロールが少し上がる傾向
12か月時点では、
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が
やや上昇する方向の結果になっていました。
心血管リスクを考えると、
脂質プロフィールは要フォローです。
糖質だけでなく、
- 脂質の「質」(オリーブオイル・魚・ナッツなど)
- 食物繊維の量
もあわせて考える必要があります。
② QOL(生活の質)がやや落ちる可能性
一部の試験では、1年後に生活の質(QOL)が少し悪化している傾向もありました。
- 外食しづらい
- 家族と別メニューになる
- 制限がストレス
など、「続けにくさ」が心の負担になる可能性があります。
誰に向いていそう?インスリン使用中の方は要注意💉
サブ解析では、
- インスリンを使っていない人のほうが、
寛解の割合が大きく増えていた - インスリン使用中の人では、寛解の増え方がかなり控えめ
という結果でした。Goldenberg J Z 2020
また、超低糖質(VLCD)は、
理論上は効果が高そうですが、
- 守りきれないと効果が出にくい
- 続けやすい「ゆるめの低糖質」の方が現実的
という示唆もあります。
とくにインスリンや血糖を下げる薬を使っている方は、
自己判断で急に糖質を減らすと低血糖の危険があります。
👉 必ず主治医と相談して、薬の量を調整しながら
ゆっくり始めることが大切です。
長期的な安全性はまだはっきりしない📅
この論文は、主に6〜12か月までのデータが中心です。
- 短期的には
- HbA1c改善
- 体重減少
- 中性脂肪減少
など、メリットが期待できる一方で、
- 1年以上の長期になると
- 効果が薄れてくる
- LDLコレステロール上昇やQOL低下の懸念
- 他の研究では、長期の厳しい低炭水化物食と死亡リスク増加の関連を示す報告も
といった点が挙げられています。Goldenberg J Z 2020
つまり、
「短期的にうまく使えば、2型糖尿病のコントロール改善や寛解のチャンスが広がるかもしれないが、
長く続ける安全性については、まだ結論が出ていない」
というのが、現時点でのバランスのとれた見方です。
2型糖尿病と糖質制限食 うまく付き合うためのポイント🌱
実際の生活で取り入れるときのポイントを、
安全性と続けやすさの観点からまとめると…
- 自己流で極端にやらない
- まずは「主食を少し減らす」程度から
- 極端なVLCDは医療チームのフォローがある場合に限定した方が安心
- 主治医・管理栄養士と相談する
- インスリン・SU薬などを使っている場合は特に重要
- 血糖・血中脂質・体重・気分の変化を定期的にチェック
- 糖質の「量」だけでなく「質」も意識
- 白いパン・白米だけでなく、
玄米・全粒粉・豆類・野菜の糖質も上手に活用 - 脂質はオリーブオイル・青魚・ナッツなど、
心血管リスクに優しい脂質を選ぶ
- 白いパン・白米だけでなく、
- ストレスにならない範囲で続ける
- 完璧主義ではなく、「7割できたらOK」くらいの気持ちで🙂
- 家族との食事、楽しみとしてのスイーツも、
量と頻度を調整しながら上手に付き合う
まとめ:糖質制限は「うまく使えば強力な選択肢」のひとつ💡
今回のメタ解析から言えることを整理すると…
- ✅ 6か月までの低炭水化物ダイエット(LCD)は
- HbA1cを平均0.4〜0.5%程度改善
- 体重を数kgレベルで減少
- 中性脂肪・インスリン抵抗性も改善
- HbA1c 6.5%未満という意味での「寛解らしき状態」は増加
- ⚠️ ただし
- 薬なしでの「完全な寛解」までは差が小さい
- 12か月では効果が薄れ、体重・HbA1cの差も縮小
- LDLコレステロールやQOLの悪化の可能性も
- 長期的な安全性については、まだはっきりした結論は出ていない
「2型糖尿病と糖質制限 低炭水化物で寛解?」
というタイトルの通り、
短期的には「寛解に近づく」一つの有望な選択肢になりうるが、
長く続けるには、医師と相談しながら慎重に使う必要がある
というのが、この論文から見えてくる現実的なラインです。
注意点(必ずお読みください)
- この記事は、BMJ誌に掲載された信頼度の高い論文をもとにしていますが、
あくまで**「数ある研究の一例」**であり、
すべての人に同じ効果や安全性が保証されるわけではありません。 - ここで紹介した内容は一般的な健康情報であり、
診断・治療・処方の代わりになるものではありません。 - とくに、
- インスリン
- SU薬(血糖を強く下げる飲み薬)
を使用している方が自己判断で急に糖質を減らすと、
重い低血糖の危険があります。
- 食事療法の変更・糖質制限の導入・お薬の減量や中止については、
必ず主治医や医療スタッフと相談のうえで行ってください。
引用文献
Goldenberg JZ, Day A, Brinkworth GD, Sato J, Yamada S, Jönsson T, et al.
Efficacy and safety of low and very low carbohydrate diets for type 2 diabetes remission: systematic review and meta-analysis of published and unpublished randomized trial data.
BMJ. 2021;372:m4743.
DOI:10.1136/bmj.m4743
オンライン公開日:2021年1月13日
今日の一歩が、未来の元気をつくります。みんなで健康寿命を延ばしていきましょう!!


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