五十肩は自然に治る?最新ガイドラインでわかった治療の考え方

医療・健康
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五十肩は時間とともに自然に改善していくことが多い疾患ですが、痛みや可動域制限が強い場合は、リハビリ、ステロイド注射、ハイドロダイラテーションなどを組み合わせて、日常生活の困りごとを減らすことが重要です。

👩‍🦰「肩が上がりにくい」
👨‍🦱「服を着るときに肩が痛い」
👩「夜、寝返りをすると肩がズキッとする」

このような症状で悩む患者さんは、整形外科やリハビリの現場でも非常に多いです。

特に40代・50代以降になると、いわゆる五十肩を疑う場面が増えてきます。

ただ、患者さんからはよく、

👨「五十肩は自然に治りますか?」
👱‍♀️「リハビリは必要ですか?」
👨‍🦱「注射はした方がいいですか?」
👨‍🦳「手術になることもありますか?」

と聞かれます。

今回は、2025年に発表された英国の五十肩治療ガイドラインをもとに、五十肩の自然経過、リハビリ、ステロイド注射、ハイドロダイラテーション、手術治療の位置づけについて、医療従事者向けにわかりやすく整理します。


はじめに|なぜ五十肩の治療方針を整理する必要があるのか

五十肩は、日常診療で非常によく遭遇する肩関節疾患です。

しかし、実際の臨床では治療方針に迷う場面も少なくありません。

「自然に治るから様子を見ましょう」
「痛くても動かさないと固まります」
「注射をすればすぐ良くなります」
「リハビリを頑張れば治ります」

こうした説明は、患者さんにとってわかりやすい一方で、やや単純化されすぎていることがあります。

五十肩は、自然経過で改善することが多い一方で、痛み、夜間痛、可動域制限、睡眠障害、仕事や家事への支障が長く続くケースもあります。

そのため医療従事者には、自然経過を説明しつつ、症状の時期や重症度に応じて治療を選択する視点が求められます。

今回紹介するBESS、British Elbow and Shoulder Society、つまり英国肘肩学会のガイドラインは、五十肩の評価と治療の流れを整理するうえで参考になります。


論文の概要

研究の目的

このガイドラインの目的は、五十肩に対する診断・評価・治療の標準的な考え方を整理し、臨床現場で使いやすい患者ケアパスウェイを示すことです。

五十肩は頻度が高い疾患ですが、自然経過、リハビリ、注射、ハイドロダイラテーション、麻酔下徒手授動、関節鏡手術など、治療選択肢が複数あります。

そのため、どの患者さんに、どのタイミングで、どの治療を検討するかを整理することが重要です。


研究デザイン

本論文は、BESS Frozen Shoulder Working Groupによる患者ケアパスウェイ・ガイドラインです。

作成にあたって、PRISMAやGRADEといった方法論が用いられています。

PRISMAとは、システマティックレビューやメタアナリシスを報告する際の国際的なチェックリストです。

GRADEとは、研究結果の確実性や推奨の強さを評価するための方法です。

なお、このガイドライン作成のための文献検索は2023年3月までを対象に行われています。そのため、それ以降に発表された研究は含まれていない点には留意が必要です。

つまり、単なる専門家の意見ではなく、既存研究を整理し、エビデンスの強さを考慮しながら作成されたガイドラインといえます。


対象者

本ガイドラインの対象は、主に原発性五十肩、つまり明らかな外傷や他疾患がない凍結肩の患者です。

五十肩は、45〜60歳前後に多く、女性にやや多いとされています。

また、糖尿病を持つ方では五十肩の発症リスクが高いことが知られています。

そのほか、甲状腺疾患、パーキンソン病、骨粗しょう症、脳卒中後などとの関連も指摘されています。

臨床では、こうした背景疾患の有無を確認することが重要です。


比較内容

ガイドラインでは、五十肩に対する複数の治療選択肢が比較・整理されています。

主な内容は以下です。

・自然経過
・患者教育
・リハビリテーション
・肩関節内ステロイド注射
・ハイドロダイラテーション
・注射後のリハビリ
・麻酔下徒手授動
・関節鏡下関節包解離術

ハイドロダイラテーションとは、肩関節内に比較的多めの液体を注入し、硬くなった関節包を広げることを目的とした治療です。

麻酔下徒手授動とは、麻酔をかけた状態で硬くなった肩関節を動かす治療です。

関節鏡下関節包解離術とは、内視鏡を用いて硬くなった関節包を処置する手術です。


評価項目

評価項目としては、主に以下が重視されています。

・痛み
・夜間痛
・肩関節可動域
・外旋制限
・日常生活動作
・睡眠への影響
・患者満足度
・短期・中期・長期の改善
・合併症やリスク

五十肩では、肩が上がらないことだけでなく、夜眠れない、服が着にくい、髪を洗いにくい、エプロンのひもを結べないといった生活上の困りごとが大きな問題になります。

そのため、単に可動域だけでなく、患者さんが何に困っているかを評価することが重要です。


主な結果

今回のガイドラインから読み取れる主なポイントは、以下の通りです。

五十肩は自然経過で改善することが多いものの、症状が長引くケースもあります。

そのため、「自然に治るから何もしなくてよい」と説明するのは不十分です。

リハビリ単独が自然経過よりも明らかに早く改善させるかについては、十分に確立されていない部分があります。

ただし、リハビリには、痛みを悪化させない動かし方、日常生活の工夫、機能改善を支援する役割があります。

肩関節内ステロイド注射は、短期的な痛みや可動域改善に役立つ可能性があります。

特に痛みが強い時期には、痛みを軽減し、睡眠やリハビリを進めやすくする目的で検討されます。

ハイドロダイラテーションは、短期〜中期的に痛みや肩の動きの改善が期待できる可能性があります。

特に外旋や外転などの制限に対して検討されることがあります。

麻酔下徒手授動や関節鏡手術は、症状が長引く場合の選択肢になり得ますが、すべての患者に必要な治療ではありません。

長期的には治療間の差が大きく出にくい可能性もあり、患者さんの症状、生活背景、希望を踏まえた意思決定が重要です。


五十肩とは?医学的には凍結肩・癒着性関節包炎

五十肩は、医学的には凍結肩または癒着性関節包炎と呼ばれます。

英語では、Frozen shoulder、またはAdhesive capsulitisと表現されます。

Frozen shoulderは「凍った肩」という意味で、肩が固まったように動かしにくくなる状態を表しています。

Adhesive capsulitisは、肩関節を包む袋のような組織、つまり関節包が硬くなり、痛みと可動域制限が出る状態を指します。

簡単にいうと、五十肩は肩の関節まわりが硬くなり、痛みと動かしにくさが出る状態です。

特に制限されやすいのが、肩を外に回す動きである外旋です。

臨床では、肩の痛みだけでなく、外旋制限の有無を確認することが診断のヒントになります。


五十肩でよくある症状

五十肩では、以下のような症状がよくみられます。

・肩が上がらない
・腕を後ろに回しにくい
・服を着るときに痛い
・髪を結ぶ、洗う動作がつらい
・夜に肩が痛くて眠れない
・寝返りでズキッとする
・エプロンのひもを結びにくい
・ベルトや下着の着脱が難しい

特に夜間痛は、患者さんのQOL、つまり生活の質を大きく下げます。

日中の可動域制限だけでなく、睡眠障害や精神的ストレスにつながる場合もあります。

ただし、肩の痛みは五十肩だけが原因ではありません。

腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、変形性肩関節症、頚椎由来の神経症状、感染、腫瘍などが背景にある場合もあります。

急な強い痛み、安静時痛が強い、発熱を伴う、外傷後から痛い、神経症状がある、夜間痛が非常に強い場合は、自己判断せず医療機関で評価する必要があります。


この論文からわかること|臨床現場でどう活かす?

1. 「自然に治る」だけでは説明不足

五十肩は、自然経過で改善することが多い疾患です。

そのため、患者さんに「時間とともに良くなることが多い」と伝えることは大切です。

しかし、そこで終わると、患者さんは痛みや不安を抱えたままになります。

実際には、痛みが強く眠れない時期や、仕事・家事・更衣動作に支障が出る時期があります。

そのため、臨床では、

「五十肩は自然に改善することが多いですが、痛みや生活障害を軽くする治療はあります」

と説明すると、患者さんの安心感につながります。


2. リハビリは“無理に動かす”ものではない

五十肩では、患者さんから「固まるのが怖いので、痛くても動かした方がいいですか?」と聞かれることがあります。

しかし、痛みを我慢して強く動かすことは、かえって症状を悪化させる可能性があります。

今回のガイドラインでは、リハビリ単独が自然経過よりも明らかに早く改善させるかについては、まだ十分に明確ではない部分があります。

ただし、リハビリには重要な役割があります。

・痛みの少ない動かし方を覚える
・日常生活で肩に負担をかけすぎない
・肩甲帯や体幹の使い方を整える
・可動域を少しずつ維持・改善する
・患者さんの不安を減らす

特に大切なのは、痛みを強く悪化させない範囲で行うことです。

患者指導では、
「痛気持ちいいより少し手前」
「翌日に痛みが強く残らない範囲」
「焦らず少しずつ」
という表現が伝わりやすいです。


3. ステロイド注射は短期的な痛み改善に役立つ可能性

今回のガイドラインで比較的はっきり示されているのが、肩関節内ステロイド注射は短期的な痛みや肩の動きの改善に役立つ可能性があるという点です。

ステロイド注射は、炎症を抑える目的で行われます。

痛みが強い時期に注射を行うことで、夜間痛が軽減し、睡眠や日常生活が楽になることがあります。

また、痛みが軽くなることで、リハビリを進めやすくなる場合もあります。

ただし、ステロイド注射は長期的に大きな差を保証する治療ではありません。

あくまで、短期的につらさを軽くし、回復しやすい環境を作る治療として説明するのが現実的です。

糖尿病がある方では、ステロイド注射後に一時的な血糖上昇が起こる可能性があります。

そのため、糖尿病患者さんでは、血糖管理状況や治療内容を確認し、医師と相談したうえで実施を検討する必要があります。


4. ハイドロダイラテーションは短期〜中期改善の選択肢

ハイドロダイラテーションは、肩関節内に液体を注入し、硬くなった関節包を広げることを目的とした治療です。

日本では施設によって実施状況に差がありますが、五十肩の治療選択肢として知られています。

今回のガイドラインでは、ハイドロダイラテーションは短期〜中期的に痛みや肩の動きの改善が期待できる可能性があるとされています。

特に、肩を横に上げる外転や、外に回す外旋の改善が期待される場合があります。

ただし、長期的にどこまで他の治療より優れるかについては、まだ不確実な部分があります。

そのため、患者さんには、

「肩の動きを改善しやすくするための選択肢の一つです」
「全員に必要な治療ではありません」
「症状の時期や生活上の困りごとに応じて検討します」

と説明するとよいでしょう。


5. 注射後のリハビリは検討する価値がある

臨床的に重要なのは、注射や処置を単独で終わらせないことです。

ステロイド注射やハイドロダイラテーションによって痛みが軽くなったタイミングは、リハビリを進めやすい時期になることがあります。

流れとしては、

注射や処置で痛みを軽減する

肩を動かしやすい状態を作る

リハビリで可動域や日常生活動作の改善を目指す

というイメージです。

ただし、注射後に必ず強いストレッチを行うという意味ではありません。

痛みの状態を見ながら、段階的に動かすことが大切です。


6. 手術や麻酔下徒手授動は“最後の選択肢”として整理する

症状が長引き、保存療法で十分な改善が得られない場合には、麻酔下徒手授動や関節鏡下関節包解離術が検討されることがあります。

麻酔下徒手授動は、麻酔をかけた状態で硬くなった肩を動かす治療です。

関節鏡下関節包解離術は、内視鏡を用いて硬くなった関節包を切離・処置する手術です。

今回のガイドラインが引用している多施設ランダム化比較試験では、関節内ステロイド注射・麻酔下徒

手授動・関節鏡下関節包解離術の3つを互いに比較したところ、いずれの治療も他より臨床的に明らかに優れているとは言えないという結果が、最も強いエビデンスとして示されています。

つまり、「より侵襲の大きい手術を選べば必ず結果が良くなる」とは限らないということです。ただし、

肩の可動域(前方挙上・外転・外旋)だけに注目すると、関節鏡手術の方が改善幅が大きかったという

報告もあります。もっとも、この点については研究デザイン上のバイアスやデータの不確実性があり、解釈には強い慎重さが必要とされています。

つまり、手術が悪いわけではありませんが、すべての患者さんに早期から必要な治療ではありません。

症状の期間、痛みの強さ、生活や仕事への影響、患者さんの希望を踏まえて、医師と相談しながら選択することが重要です。


自宅で気をつけたいポイント

五十肩では、自宅での過ごし方も重要です。

痛みが強い時期には、無理に肩を上げすぎないようにしましょう。

寝るときは、痛い側の肩を下にしない方が楽なことがあります。

腕の下にクッションを入れて支えると、肩への負担が軽くなる場合もあります。

また、運動は強く伸ばすより、やさしく続けることが大切です。

患者さんには、次の3つを伝えると実践しやすいです。

毎日少しずつ
痛みが強くならない範囲で
焦らず続ける

「痛みを我慢して動かすほど良い」という考えは避けた方がよいでしょう。


患者さんに説明するならこの一言

臨床現場では、次のように説明するとわかりやすいです。

「五十肩は時間とともに自然に改善することが多いですが、痛みや生活の困りごとを減らす治療はあります。痛みが強い時期は注射、動かしやすくなってきたらリハビリなど、時期に合わせて治療を選ぶことが大切です。」

この表現であれば、自然経過を伝えながらも、放置や過度な我慢を避けやすくなります。


注意点

この記事は、できるだけ信頼度の高い論文やガイドラインを参考に作成していますが、数ある研究の中の一例です。

五十肩は自然に改善することが多い一方で、症状の強さ、発症からの期間、糖尿病の有無、肩関節の状態、仕事や家事への影響によって、適した治療は変わります。

研究結果をそのまま鵜呑みにせず、対象者、研究デザイン、治療内容、評価期間、研究の限界を踏まえて読む必要があります。

また、ステロイド注射、ハイドロダイラテーション、リハビリ、麻酔下徒手授動、関節鏡手術などの効果や安全性を、すべての患者さんに対して断定することはできません。

個別の診断、治療、運動指導については、医師、理学療法士、作業療法士、看護師、薬剤師など専門職の判断が必要です。

肩の痛みが続く場合、夜間痛が強い場合、外傷後に痛みが出た場合、発熱や腫れを伴う場合、しびれや筋力低下がある場合は、自己判断せず整形外科などの医療機関で相談してください。

この記事は、診断や治療を目的としたものではなく、一般的な医療情報の提供を目的としています。


まとめ

今回のガイドラインから、五十肩の治療について次のことが整理できます。

五十肩は、時間とともに自然に改善していくことが多い疾患です。

しかし、痛みや可動域制限が強い時期には、日常生活や睡眠に大きな支障が出ることがあります。

そのため、「自然に治るから我慢する」だけでは不十分です。

ステロイド注射は、短期的な痛みや肩の動きの改善に役立つ可能性があります。

ハイドロダイラテーションは、短期〜中期的に痛みや可動域改善が期待できる可能性があります。

リハビリは、無理に肩を動かすものではなく、痛みを悪化させない範囲で、日常生活動作や可動域の改善を支える役割があります。

麻酔下徒手授動や関節鏡手術は、症状が長引く場合の選択肢になり得ますが、すべての患者さんに必要な治療ではありません。

医療従事者としては、患者さんに対して、自然経過、痛みのコントロール、リハビリ、注射、手術選択肢をバランスよく説明することが大切です。

五十肩は、焦らず、放置しすぎず、今の症状に合った治療を選ぶことが重要です。


FAQ

Q1. 五十肩は自然に治りますか?

五十肩は、時間とともに自然に改善していくことが多い疾患です。

ただし、痛みや可動域制限が長く続く場合もあります。

日常生活に支障がある、夜眠れない、痛みが強い場合は、我慢せず整形外科で相談することが大切です。


Q2. 五十肩ではリハビリをした方がよいですか?

リハビリは、痛みの少ない動かし方を学び、日常生活動作や肩の動きを少しずつ改善するために役立つ可能性があります。

ただし、痛みを我慢して強く動かすことはおすすめできません。

症状の時期や痛みの強さに合わせて、医師や理学療法士と相談しながら進めることが大切です。


Q3. 五十肩にステロイド注射は有効ですか?

肩関節内へのステロイド注射は、短期的な痛みや可動域改善に役立つ可能性があります。

特に痛みが強く、夜間痛や日常生活への支障が大きい場合に検討されることがあります。

ただし、長期的に必ず大きな差が出るとは限らず、糖尿病がある方では一時的な血糖上昇に注意が必要です。


記事作成に関する注記

この記事は、論文選定を筆者である理学療法士が行い、文章作成にはAI(ChatGPT)を活用しています。完成した文章は、筆者が内容を確認し、必要に応じて修正・加筆を行っています。


論文情報

著者名:Rupani N, Gwilym SE, and on behalf of the BESS Frozen Shoulder Working Group

発表年月日:2025年4月23日(オンライン先行公開)

論文タイトル:British Elbow and Shoulder Society patient care pathway: Frozen shoulder

掲載誌:Shoulder & Elbow. 2025;17(巻):351-363

DOI:10.1177/17585732251335955

PMID:40291049

補足:本論文は、BESS、British Elbow and Shoulder Society、英国肘肩学会による五十肩の患者ケアパスウェイであり、PRISMAやGRADEを用いて作成されています。

この記事を書いた人
ミカタ

ミカタ(理学療法士)
元リハビリテーション部長。採用する側として数百件の面接を経験し、現在は整形外科クリニックの経営管理部長。年間200本以上の医学論文を読む健康オタク。エビデンスに基づくカラダの話と、採用側の視点で語るリハ職のキャリアの話を発信しています。

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